

益子林業のブログ
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JAS規格が改正されました 2025.09.26 
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とちぎ八溝杉を製材・販売する益子林業です。
思い起こせば2005年頃、栃木県環境森林部が中心となり、「とちぎスギKD平角プロデュース会」が発足しました。益子林業も微力ながら試験材を提供し、栃木県林業試験センターにて延べ1435本の栃木県産出材の平角実大材の曲げ破壊試験を行い、曲げヤング係数を測定しました。
その結果を「とちぎスギ平角材の品質と曲げ性能」という冊子にまとめ、スパン表が完成しました。




栃木県産出材の平角はその95%以上がヤング係数E70以上になるため、グレーディングマシーンにて計測したヤング係数E70の平角を安定供給することが可能であることが証明され、生産者、販売者ともに胸を張ってとちぎ材の杉KD平角を広めてきました。
最近では、住宅に許容応力度計算を行う工務店も増えてきて、グレーディングを行った、とちぎスギ平角の注目度が益々上がってきたところです。
そして、2025年7月30日にJASが改正されました。
国産材に関わる者には大変大きな影響があります。中でも杉の梁桁を扱う木材業者には衝撃的な改正となりました。詳しくは、9月22日(月)の日刊木材新聞の「時評」を書き写しましたので、ご一読下さい。
日刊木材新聞 9月22日(月) 「時評」の書き写し
7月30日に施行されたJAS規格の改正で、機械等級区分構造用製材JAS製品を供給する製材工場に混乱が生じている。従来は最小値と最大値で管理されていた等級が平均値を基準にした格付け方法に変わり、格付け歩留まりが大きく低下すること、従来と同じ歩留まりで供給しようとする場合、品質管理が煩雑化することが要因だ。杉で機械等級JAS認証を保有する製材工場に聞き取りした限りでは、後者の選択肢はほとんど考えられておらず、歩留まり低下という難題に直面している。例えば、E70の製材を供給する場合、従来は曲げヤング係数が5.9~7.8(GP aまたはkN/㎡)の間にあれば合格とされたが、新基準では7.0以上が基準になり、6.9以下の材料は不合格となる。
強度分布には地域差があるが、例えば栃木県が発行している「とちぎスギ平角材の品質と曲げ性能」によると、栃木県産杉の場合、6.7~7.7の出現頻度が30%と最も多く、従来基準ではE70以上が全体の約55%を占めた。だが、新基準では、「出現頻度で7.0を山の頂点とすれば、半分は不合格になるイメージ」(製材工場)。
集成材やLVLのJASは従来から平均値で管理されており、製材もこれに準じた形だが、製材の場合、E70より下位の等級はE50となるため、強度評価が大きく低下する。今年、機械等級JASを取得し、E70を基準に杉KD平角を供給しようとしていた栃木県の工場は「一般的な杉の集成材がE65のため、E70なら競争力があると考えたが、歩留まりが半分では考え直さざるを得ない」と語る。
別の地域で住宅会社に機械等級JASの杉KD平角を供給していた製材工場は、対応を断念し、「目視等級JASに切り替えてもらった」という。「4号特例の見直し」「構造計算が必要な建築物の対象範囲の拡大」を含む改正建築基準法が4月に施行され、機械等級JAS普及の機運が大きく高まるなか、今回の規格改正が思わぬ逆風となる恐れがある。
従来は月1回の曲げ試験を毎週実施するなど、新たに定められた品質管理規定を採用すれば、6.0~6.9でもE70として供給できる。だが、JASだから高く売れるという保証がないなかで、単純に手間が4倍に増えることを敬遠して様子見をしている工場が今のところ多い。
規格の見直しは5年に一度で、向こう5年間は新規格で対応せざるを得ない。とすれば、E50でも採用可能な構造材仕様を研究機関や住宅・建築業界と改めて構築していくか、手間とコストが掛かっても新たな品質管理規定を製材業界が受け入れるかのどちらかしかない。
最終的にどちらに落ち着くかは不明だが、どちらが主流になるにしても「それなら無等級材で良い」という時代に逆行した空気が広がることだけは何としても避けなければならない。業界を挙げて早急に対応策を講じるべき大問題である。
この記事を読む限りでは今回の改正は、ごもっともな事であり、逆に何故今までは基準が甘かったのか問いたくなります。何はともあれ弊社の場合、長さ3m、4mの材成240㎜までならE70での提供は今まで通り可能ですが、それ以外はE50もしくは無等級での販売になってしまいます。もちろん結果的に材料にE70の印字がされるかもしれませんが、構造計算時にはE50もしくは無等級で行ってもらわなくてはなりません。


今まで、何度も構造計算を繰り返し献身的にとちぎ材のスギ平角をご使用いただいてきた建築家の方には誠にご迷惑をお掛けする結果となりましたが、やはり事実に則した数値にて構造計算することが施主のためになりますので、私は今回のJAS改正は良いことだと思います。そしてとちぎ材の魅力である美しさを生かした使い方をご提案していくのが私達栃木県の木材業者の使命であると思っております。
益子林業は、今後も正直に、使う方の利益を考えたご提案をしてまいります。
 










