

益子林業のブログ
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南部赤松との出会い 2025.07.16
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地松の平角を作り始めて5年~6年ほどたった頃、栃木県林務部主導で杉の平角KD材の強度試験を行うプロジェクトが始まりした。
400本以上の杉KD材平角の破壊強度やヤング係数を測定し、栃木県産出材の杉が平角として利用できるようにしようというものでした。
数年かけたプロジェクトの結果、栃木県産出杉材はその95%がヤング係数E70以上であることが判明したのです。
この95%とはE70に満たないものは間柱など別な材料に仕分けしても、コスト的に十分製品化できる数字でした。
また、グレーディングマシーンにかけることで個々のヤング係数も測定できるので、E70やE90での構造計算も可能になります。
これらの結果を踏まえて、弊社では地松の平角の生産を止めることにしたのです。
そうなると側で採っていた造作材も採れなくなります。
苦労の末に確立した地松造作材の乾燥技術を生かし、その後も作り続けていくためには、平角の側で採る造作材ではなく、造作材をメインに採るための丸太を仕入れる必要に迫られました。
奇しくも、ちょうどそのタイミングで横浜の工務店様から地松の厚み30㎜の床板を作れないかとのオファーがありました。
もう平角は作らないので、造作材をメインに採る品質の丸太を探しました。そして出会ったのが岩手県産南部赤松です。
実生の、赤身から目の積んだ南部赤松は惚れ惚れするような品質で、当然人気があり競争も激しいのですが、この丸太なら造作材をメインに製材できると直感しました。
早速、南部赤松の原木を仕入れて製材してみると、目合いが美しく、実に奇麗な造作材を作ることができたのです!
しかも素性も良く、それまで作っていた製品よりも高品質な造作材が作れるようになったのでした。
無節の部位では、玄関框、玄関巾木、床板を採り、節のある部位では床板を採ることになりました。
この木取りにすると、南部赤松のメイン製品は床板となるわけです。
UNDER8の乾燥技術が南部赤松用にアレンジされ、30㎜と15㎜の節あり、節なしの床板を作るようになりました。
何でもそうですが、コストさえかければ誰でもいい製品は作れます。
しかし、お客様に選んで頂けるコストパフォーマンスで確かな品質を確保するには、それなりの工夫と努力、投資が必要になります。
杉の床板は、10年前に比べれば市場に出回る製品の品質はかなり向上してきたと思います。
しかし、国産赤松の床板をUNDER8の品質で作れる製材工場は未だに無いと思います。
また今後もなかなか現れないと思います。何故なら、レア過ぎて国産赤松床板のことすら知らない人が殆どで需要がないから(笑)。